2014年5月31日土曜日

江戸絵画の19世紀(府中市美術館)


江戸時代の芸術と言えば、元禄、文化・文政などという時代区分が使われるが、19世紀という新鮮な区切りを設けて、1800年頃から幕末までの江戸時代の絵画を展示した、ユニークな内容の展覧会。

19世紀という区分では、やはり、北斎の存在感が圧倒的。富嶽三十六景に代表される、その大胆な構図や、いきいきとした人々の表現は、後世、世界中に大きな影響を与えた。

北斎は、1760年生まれだが、主な活躍時期は、19世紀の前半。日本のみならず、ヨーロッパを含めて考えてみても、19世紀は、北斎の世紀と言ってもいいだろう。

亜欧堂田善という名前は、このところ良く目にする。西欧の絵画、版画の技法を学び、数多くの油絵、版画作品を制作した。

遠近法を使って描かれた、当時の町の風景や、郊外の景色は、実に新鮮だ。

亜欧堂田善の作品を目にしてから、北斎や広重の浮世絵を見てみると、実は、浮世絵には遠近法の技法が随所で使われていることがよくわかる。

江戸時代の芸術における、ヨーロッパの影響は、一般に考えられているよりも、かなり大きなものだったのだろう。

浦上玉堂、田能村竹田、岡田米山人らの文人画も、18世紀後半から19世紀にかけて盛んになった。

太平の時代が長く続き、その中で俗世間から距離をとって、独自の芸術世界を夢見た文人画家達の作品は、素朴で、個性的な作品が多い。ルソーやピカソの先駆けと言ってもいいかもしれない。

狩野芳崖と言えば、明治初期の画家、という印象が強いが、その活動は、江戸時代から始まっていた。

文字通り、狩野派の絵師だった芳崖は、フェノロサに出会うまでは、伝統的な狩野派の技法で、典型的な狩野派の絵画を描いていた。

他にも、普段はあまり耳にすることがない、多くの絵師たちの作品を目にすることが出来、大きな満足を味わった。

0 件のコメント:

コメントを投稿