2014年5月31日土曜日
マルク・シャガール 版画の奇跡・無限大の色彩(目黒区美術館)
シャガールの3つの版画のシリーズ作品を中心にした展覧会。
まずは、サーカス。シャガールは、1927年に画商のヴォラールから、サーカスをテーマにした版画集の出版を依頼されたが、ヴォラールの死によって、企画は中断された。
その40年後、今度はテリアード社から同様の依頼を受けて、この企画は、ようやく実現した。
サーカスのテントの中で、アクロバットをする人物や、猛獣達が、シャガールの独特の表現で、美しい色彩で描かれている。
人物が空中に浮かんでいる、シャガールの世界は、サーカスを描く画家としては、最も相応しい画家といっていい。
中には、サーカスとは関係のない、シャガールの故郷と思しき、ロシアの農村を描いたような作品も何点かある。シャガールにとっては、サーカスは、そうしたノスタルジックな思いをかき立てる、そんなテーマだったのだろう。
続いての作品は、ダフニスとクロエ。
シャガールは、このギリシャ神話の世界を描くために、ギリシャの地を2度訪れて、3年の後に完成させた。
サーカスでは、自分のイマジネーションを遺憾なく発揮させていたシャガールだが、このダフニスとクロエでは、物語の各シーンを、忠実に再現することに重きを置いている。その分、色の使い方には、かなりの神経を使っており、実に美しい色彩世界を生み出している。
最後の作品は、死せる魂。原作は、シャガールの故郷、ロシアの作家ゴーゴリの作品。ロシアの農奴制を軸に、当時のロシアの世相を強烈に皮肉ったゴーゴリの作品を、シャガールは、ユーモアに溢れた表現で、見事に表現している。
サーカスとダフニスは、色鮮やかな作品だったが、こちらは白黒。それが、逆に、この作品に新鮮な印象を与えている。
この展覧会に行く前に、この死せる魂のオペラ作品をたまたまテレビで見ていたので、オペラとはまた違った趣で、この作品をテーマを味わうことが出来た。
シャガールの作品には、人が中を浮かんでいたり、動物が数多く登場したり、不思議な記号が登場するが、これらは、ユダヤ教の思想が深く関係しているという説があるようだ。
しかし、そうしたことを知らなかったとしても、私は、この画家の世界には、無条件に魅了されてしまう。
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