2014年11月1日土曜日
菱田春草展(国立近代美術館)
東京、竹橋の国立近代美術館で開催された菱田春草の大規模な回顧展。
落葉、黒猫、菊慈童など、錚々たる作品が展示されている。
しかし、これだけの数多くの作品を描き上げた菱田春草は、37才を目前にして、この世を去ってしまった。
菊慈童という作品には、最近の調査によって、微妙に金粉が使われていることがわかったという。
菊慈童とは、謡曲として知られるが、不思議な力によって、不老不死の命を得た存在。
菱田春草は、科学的な調査をしなければわからないほど、少量な金粉を使って、その幻想的な世界を作り上げている。
菱田春草を代表する落葉という大作には、いくつかのバージョンが存在する。
菱田春草は、それらの様々なバージョンの作品で、木々の配置、地面に広がる落ち葉の広がり具合、鳥の位置、色合いや明暗などを試している。
落葉というこの作品は、明らかに長谷川等伯の松林図屏風を意識しているが、その色合いや描き方には、西洋画の遠近法の技法が使われている。
わずか20年ほどの菱田春草の画業は、文字通り、実験の繰り返しだった。
大成のための実験の中で、この画家は、すでに大成していたのかもしれない。
昨年、横浜美術館で開催された、横山大観展、下村観山展。そして、岡倉天心の教え子ではなかったが、この国立近代美術館で開催された、竹内栖鳳展。
あしかけ2年の間に、この4つの展覧会を見ることで、伝統的な日本絵画が、明治維新という大きな歴史の流れの中で、西洋画の技術を吸収し、どのように生き延びたのかを、直接体験することができた。
それにしても、菱田春草の作品の数々を目にした後で、もう少し長く、生きて欲しかった、と願わないわけには、どうしても、いかなかった。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿