2014年8月24日日曜日

ジョージ・ネルソン展(目黒美術館)


寡聞にも、ジョージ・ネルソンのことは、全く知らなかった。

ジョージ・ネルソンは、戦後のアメリカのインダストリアル・デザインに大きな影響を与えた人物だが、その活躍は多岐に渡り、一言で”インダストリアル・デザイナー”と表現することはできない。

ネルソンは、始めは建築家を目指しており、ヨーロッパに渡ってコルビジェやグロピウスにインタビューをしたり、建築雑誌に記事を書いていたりした。

1959年にモスクワで開かれたアメリカ博覧展の総合デザイナーを務め、”ジャングルジム”と呼ばれた、個性的な格子状の展示スペースを設計した。

会場には、その一部を再現し、全体の模型や当時の映像も展示していた。ネルソンのシンプルさを基調とするデザインセンスがよく表れている。

住宅に関しては、あふれる品々を収納できるスペースを十分にとった、モジュラースタイルの住宅を、明日の住宅として、そのコンセプトを発表している。

アメリカのハーマン・ミラー社のデザイナーとなり、家具などのデザインの他、企業ロゴやパンフレットのデザインも行い、今日の企業ブランディングの基礎を築いた。

企業で働く、ファッショナブルな衣服を着こなすタイピストの女性たち。ネルソンは、オフィスはそうした女性たちが、気持ちよく働けるように、機能的で魅力的でなければならない、という考えを持っており、机、いす、キャビネットなどのオフィスを設計した。

会場には、そうしたオフィス用品が展示されていたが、いずれも、自分のオフォスで使ってみたいものばかり。

ネルソンは、科学技術が進み、大量消費を行うようになった現代社会には、常に批判的な視点を持っており、映像作品や文章に、その考えをまとめている。

人間が過去に作ってきた数々の兵器の歴史をあつかった、”如何に人を殺すか”という映像作品は、現代社会における核兵器などの大量破壊兵器を強烈に皮肉った内容になっている。

ネルソンは、チャールズ&レイ・イームズやアレキサンダー・ジラードらを見いだし、彼らとコラボレーションを行う事で、その才能を開花させてもいる。

ジョージ・ネルソン。20世紀のアメリカを代表するそのデザイナーの名は、彼が作り上げた数々の作品やコンセプトともに、深く心に刻まれた。

0 件のコメント:

コメントを投稿