2014年8月10日日曜日

ベン・シャーンとジョルジュ・ルオー(神奈川県立近代美術館 鎌倉別館)


鎌倉の鶴岡八幡宮のすぐわきにある、神奈川県立近代美術館 鎌倉別館。

版画のコレクションで知られるその美術館で、ベン・シャーンとジョルジュ・ルオーの版画作品が展示された。

ジョルジュ・ルオーは、『ミセレーレ』の全58点を展示。

この作品を、私は20年以上も前に、目にしたことがあった。

それから、個々の作品を目にすることはあったが、全点をまとめてみるのは、およそ20年振り。

ルオーが、『ミセレーレ』を完成させたのは、1927年。第1次世界大戦での経験や、父の死の悲しみなどが、その制作の背景にあった。

生きることの苦しみ、どうしようもない不平等、悪の勝利、そして、最後は神の慈悲にすがるしかない、悲しい人間の本質が、ルオー独特の表現で、表されている。

20年前は、その世界が、ダイレクトに自分の心の中に突き刺さり、深い感動を覚えた。

しかし、この展覧会では、もう少し、違った眼で、この作品を見ている自分に気がついた。

もうひとつは、ベン・シャーンの『マルテの手記』をテーマにした版画集。こちらも、全点が展示された。

ベン・シャーンは、現在のリトアニアにユダヤ人の子として生まれ、幼い頃にアメリカに移住した。

ポスター、版画、イラストなどの作成を行い、アーティストとという枠に囚われず、多彩な活躍をした。

何年か前に、埼玉県立近代美術館で開催された、ベン・シャーンの第5福竜丸に関する作品の展覧会を訪れたことがあり、それ以来、ずっと気になっていた人物だった。

ベン・シャーンは、若い時にパリを訪れ、そこで『マルテの日記』に出会い、主人公のマルての境遇が、その時の自分と似ていたことから、深い感動を覚えた。

70歳となり、その当時の思いを、20枚ほどの版画として作品にした。

シャーンは、その翌年に亡くなっている。

握り合った二つの手。抱き合った二人の人物。そして、力強くペンを持った手。

この3点の、線だけで表現された版画が、強く印象に残った。

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