2014年1月11日土曜日
モネ、風景を見る絵(国立西洋美術館)
モネは、日本人が最も好む画家の一人だ。上野の国立西洋美術館で、そのモネの名前を冠した展覧会を開催すれば、多くの人が訪れるのは、容易に想像できる。
しかし、およそ100点からなる展示品の中で、モネの作品は、40点未満しかなく、それ以外は、モネと同時代の画家の作品から構成されている。
この展開会の名称は、客寄せにはいいかもしれないが、内容をよく表しているとは、とても言えない。
展覧会自体は、非常に面白い。一つの風景やテーマについて、モネと他の画家たちが、どのように描いたかを、並べて比較できる構成になっている。
展示されていた作品は、この展覧会を共同で企画した、ポーラ美術館と国立西洋美術館の収蔵品で構成されている。そのせいか、時々、以前に見たことがあるような感覚に襲われる。
カミーユ・ピサロは、私が最も好きな画家の一人。ピサロの絵には、これといって大きな特徴はないかもしれないが、彼の絵を目にするたびに、何故か、とても落ち着いた気持ちになる。
冬景色、休憩、収穫、といった作品では、名前を聞いて、誰もが想像するような、当たり前の風景を、印象派の後輩の画家たちから学んで手法で、淡々と描いている。それこそが、この画家の魅力なのだ。
ゴッホの、ばら、と、草むら、という2つの作品。いずれも、画面いっぱいに、クローズアプで対象が描かれている。伝統的な西洋絵画ではない構図。ゴッホは、すでにモネの作品を見ていたのだろうか。あるいは、日本の絵を参考にしたのだろうか。
ギュスターヴ・クールベの波という作品。薄暗い雲が張りつめる、今にも雨が降りそうな天気の海辺。大きな波が、岸に打ちつけている。
この絵の主役は、文字通り、波。クールベの風景画は、単なる風景を描いているのではない。それは、何かの象徴のようでもあり、自然の持っている神秘を、描き出しているようでもある。
アンリ・ウジェーヌ・ル・シダネルの三本のバラ。屋外の無人のベンチ、テーブルの上には、三本のバラ。人物は描かれていないが、ついさっきまで、そこに人がいたことを感じさせる。シダネルの独特の世界観が、よく表れている作品。
オディロン・ルドンのブルターニュの海。他の画家たちが描いている海とは全く違う海の風景。空は、何かを告げているように、オレンジ色に包まれている。虚空から、不思議な生き物が生まれでてきそうな、何ともデンジャラスな雰囲気をたたえている。
さすがに、モネの作品についても、書いておいた方がよいだろう。
1907年に描かれた睡蓮。灰白色の緑色で描かれた池の表面に、睡蓮の花草が浮かんでいる。モネというと、19世紀の画家というイメージが強いが、彼は、20世紀の初頭まで活動をしていた。モネは、20世紀の画家でもある。
このモネの睡蓮は、モダンアートと呼ぶに相応しい作品だと思う。
会場を後にする頃には、すでに日が落ちていた。
やはり、この展覧会の名称は、別な名称にした方がよかった。
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