2014年1月5日日曜日
内と外−スペイン・アンフォルメル絵画の二つの『顔』(国立西洋美術館)
日本スペイン交流400周年事業の一環として開催された展覧会。スペイン、マドリードのソフィア王妃芸術センターが所蔵する、4人のスペイン・アンフォルメルの画家たちの14作品が、国立西洋美術館の常設展示の会場に展示された。
4人のうち、2人はフランコ政権下でもスペインに留まり活躍し、他の2人はアメリカに渡った。内と外、という名称は、そこから来ている。
会場の入り口には、スペインのフェリペ皇太子のメッセージが、うやうやしくパネルとなって展示。そのすぐ隣に、アントニオ・サウラの作品、フェリペ2世の想像上の肖像画、という作品が展示されている。
この作品は、スペイン・ハプスブルグ家の全盛期の王、フェリペ2世の上半身像が、まるでパロディのように、こどものいたずら書きのスタイルで描かれている。皇太子とのメッセージとの対比が、何とも洒落た演出で、この展覧会の性格を、よく表していた。
そのアントニオ・サウラは、この展覧会の主役と言っていいだろう。
横5メートル、縦2メートルの大群衆、という作品は、他の3人の画家たちの作品を圧倒していた。
その大きなキャンバスの中には、サウラの独特の表現で、無数の人々の顔が描かれている。まさに、群衆だ。色は、キャンバスの白と、黒と灰色のみ。そのモノトーンが、よけい、大群衆の無個性さを演出している。
サウラは、フランコ政権下でも、マドリードを中心に活動を続けた。もうひとりの内の画家は、アントニ・タピエス。
タピエスは、岡倉天心の『茶の本』に感銘を受け、日本の文化に深い関心を持っていた。滝口修造や、具体の作家たちとの交流も行っていた。
横3.5メートル、縦2メートルのこちらも大作、木の上の大きなニス、は、文字通りの木で作られたキャンバスの上に、ニスが、まさに、アンフォルメルな形に塗られている。
何かを描くというよりは、描いている素材そのものに注意を向けさせる、タピエスの意図がよく表れている作品。
続いては、外の2人の作家の作品。
ホセ・ゲレーロは、30代でアメリカに渡り、長くその地で活躍した。展示されていたのは、黒い叫び、と、黒い土地、という2つの作品。
黒い叫びは、黒く描かれた動物のような、口の形のようなものが、何かを叫んでいる。その題名とは異なり、子供の絵のような、ほのぼのした印象。
黒い土地、では、こちらも色でいえば、茶色、オレンジ、白が勝っており、黒は、ところどころに効果的に使われている。
いずれの作品でも、黒、という言葉は、絵の内容を表しているというよりは、作家が作品に持っているイメージを表現しているようだ。
最後に、エステバン・ビセンテ。パリに留学し、ピカソやデュフィらと交流し、ニューヨークに渡ってからは、デ・クーニング、マーク・ロスコらと、アメリカ抽象主義を主導する画家として活躍した。
ピンクとグレーの中で、という作品は、文字通り、ピンクとグレーで描かれた抽象絵画。サガポナックという作品では、自分が暮らしていた海沿いの自然に溢れた様子が、青と緑色の基調で描かれる。
以前、マドリードを訪れた際に、プラド美術館に時間を奪われすぎて、ソフィア王妃芸術センターを訪れることができず、それ以来、ずっと後悔していた。
この展覧会で、わずかながら、その後悔に報いることができた気がした。また、この4人の画家たち、作家たちに、何か親近感のような、運命的なものを感じた。
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