2014年1月18日土曜日

茶道具取り合わせ展(五島美術館)


東京、上野毛にある、五島美術館。新年の茶道具取り合わせ展。ちょうど、千利休をテーマにした映画が公開されていたこともあり、利休ゆかりの展示が多かった。

千利休の師にあたる。武野紹鴎、豊臣秀吉、そして千利休、その子の道安の消息が、揃って展示されていた。

秀吉の消息は、正室や側室に当てた日常的な消息が多い。明を征服しようという野望を持っていた人物が、女性たちに対して事細かな配慮を行っていたのを目の当たりにするのは、実に不思議な感覚を覚える。

藤原定家筆の小倉色紙。定家が、小倉百人一首の色紙を仕上げるために、試し書きした色紙と考えられている。達筆ながら、わかりやすい字で書かれており、素人目にも、ほとんどの文字が読み取れる。

百人一首は、ある人物から、和歌を知らない人間への入門として依頼された、という成立のエピソードの確かさを、物語っているような色紙だ。

唐物の茶碗の数々。稲葉大海、安国寺、本能寺、利休円座、などの錚々たる名品が並んでいる。いずれも、13世紀の南宋時代に作られた作品。おそらく、そうした茶器を、千利休をはじめとした商人たちが、当時の明の国から取り寄せたのだろう。

昔の染織り物の断片を、名物裂として、それを書の手鑑ようにまとめたのが、名物裂手鑑。いくつかの手鑑が展示されていたが、いずれも、中国やインドの更紗がほとんど。それらは、茶道具の袱紗や、茶入れの袋に使われたのだろう。

茶道というと、純日本的な印象が強いが、その成立期においてはむしろ、中国の文化を日本に持ち込み、日本風にアレンジした、というものだった。

五島美術館の収蔵品の中でも、私の最もお気に入りの一つ、古伊賀水指、破袋。水差しながら、表面が崩れて、割れかかっており、それが破れた袋のように見えることから、そう呼ばれている。

茶人、古田織部が、今後、これ以上の水指は作られることはないだろう、と書いた手紙が残されている。

茶道という今に続く伝統が、まさに作られていった時代の雰囲気を、肌で感じられるような、非常に面白い展覧会であった。

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