2014年1月19日日曜日

新春展(ニューオータニ美術館)


東京、赤坂のホテル・ニューオータニの6階のロビー階に、ひっそりとあるニューオータニ美術館の新春展。お正月らしく、館収蔵の名品が、数多く展示された。

アンリ・リヴィエールの『エッフェル塔三十六景』。リヴィエールは、後期印象派の画家だが、日本の浮世絵に強く魅せられ、独自の版画技術を学び、北斎の富嶽三十六景にヒントを得て、この作品を作り上げた。

パリのいろいろな場所から見える、エッフェル塔の風景が、北斎や広重の構図をヒントに、柔らかに味わいの版画で表現されている。

池大雅の洞庭赤壁図鑑。中国の代表的な2つの風景を、ひとつの大きな巻物の画面に表現した作品。”壮観”という言葉が思い浮かぶ。

大雅が描く際に参考とした中国の図版が、すぐ横に展示されていた。全体の構図は、それを参考にしているが、細かい点に、大雅独自のアイデアが、随所に盛り込まれている。

洞庭湖の水辺には、細い筆先で、水の上に建てられている水上住宅が、数多く描き込まれている。

江戸時代、寛永年間に描かれた、舞踏図。立派な仕立ての屏風に描かれているが、款はなく、誰が描いたかはわからない。

4人の女性が、4枚の画面にそれぞれ描かれている。右端は、あきらかに幼い少女。それぞれの表情が似通っているように見え、一人の少女が成長している姿のようにも、単に4人の女性の踊りの様子を描いているようにも見える。

4人の女性の着ている着物が、色地や柄がそれぞれ違い、華やかな雰囲気を演出している。長い戦国時代が終わり、平和の世の中が訪れた、そんな時代の雰囲気を感じさせる作品。

こちらも、無款の元禄風俗図。作者は、菱川師宣と考えられている。女性の振り返ったポーズや、人物の表情は、確かに師宣を彷彿させる。

三味線を演奏する人、書をたしなむ人、碁に興ずる人など、文字通り、元禄の風俗が描かれている。ここでも、人々が来ている着物の美しさが目を引く。”粋”という言葉が、ぴったりと当てはまる。

岩佐又兵衛の本間孫四郎遠矢図。長い絵巻物を切り取ったような作品。太平記の中の一場面。矢を取りに向かって放っている様子を、両陣営が見守っている様子が、又兵衛の細かい筆さばきで描かれている。

喜多川歌麿と鳥居清長の美人図の肉筆画。浮世絵で有名な二人だが、肉筆画を見ると、二人の純粋な画家としての技術の確かさが見て取れる。

藤田嗣治の横臥裸婦。藤田作品によく見られる、ベッドに横たわる女性像。近づいてよく見ると、ベッド上のシーツの微妙な凹凸を、藤田独特の細かい線で、見事に表現している。

新春に相応しい、華やかな内容の展覧会であった。

0 件のコメント:

コメントを投稿