2014年1月5日日曜日

エドヴァルド・ムンク版画展(国立西洋美術館)


2013年は、ムンクが生まれて150年周年という記念の年。国立西洋美術館は、それを記念し、収蔵するムンクの版画34点を展示した。

ムンクの代表作である、マドンナの版画版。油絵のものとは違い、絵の周囲に精子と赤子が描かれている。精子は、左手から、額縁のようにぐるりと絵の周りを取り巻いている。そして、最後に、左下に赤子が描かれている。マドンナの中で、精子から、赤子が生まれる様子を表現しているのだろう。

マドンナも、体をくねらせていて、その曲線が、周りを取り巻いている精子と、美しいハーモニーを奏でて、それが、この絵画に、穏やかで優しい雰囲気を醸し出している。

ヴァンパイアという作品では、女性が男性の首に噛み付いていて、ハルピュイアという作品では、翼をもった女性の化け物が、勝ち誇ったように、地上に横たわった男性の上空を飛んでいる。

いずれも、一生結婚しなかったムンクの、女性に対する潜在的な恐怖心が表れているようだ。

ムンクが自らストーリーを作ったという、アダムとイブの話が基になった、アルファとオメガというリトグラフ連作。

アルファとオメガは愛し合い結ばれるが、女性のオメガは、動物に対しても恋心を抱き、いろいろな動物と関係を結んでしまう。

怒ったアルファは、オメガを殺してしまうが、最後には、アルファは、オメガと動物の間に生まれた、半人間の怪物たちによって、殺されてしまう、という、少しダークなストーリー。

オメガと動物の間に子供ができるという部分には、キリスト教ではない、ヨーロッパの昔話が取り入れられている。

リトグラフの中には、ムンク独特のイメージが使われている。アルファとオメガが海辺で愛を語り合う場面では、月が海面に長く伸びたイメージが使われ、オメガを殺してしまい、呆然とするアルファは、有名な”叫び”の絵そっくりだ。

ムンクは、晩年に、ノルウェーの公共施設の壁画を描くようになった。歴史、というリトグラフは、その試作。海を望む広大な平原。岩に上に腰掛けて、老人が少年にノルウェーの歴史を語りかけている。

ムンクというと、どうしても、叫び、のイメージが強いが、この展覧会では、それとは少し違ったムンクを知ることができた。

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