2014年6月7日土曜日

ハブロ・ピカソ 版画の線とフォルム(町田市立国際版画美術館)


ハブロ・ピカソの版画作品を、初期の時代から晩年の作品まで展示した、町田市立国際版画美術館の展覧会。

1905年に作られた、サルタンバンクの家族を描いた作品。サルタンバンクとは、サーカスの旅芸人のこと。まだ有名になる前の作品で、フォルムは、ごくシンプル。サーカスの練習を行う父と子、その横で幼い子供をあやす母親などが、シンプルな線で描かれている。

1935年のミノタウロスを描いた作品。牛の大きな頭、灯を掲げる少女の姿など、全体の構図は、ゲルニカに似ている。

ビュフォンの『博物誌』への挿絵として作成された、数々の動物の絵。そこには、いわゆるピカソのイメージはない。馬、牛、犬、ネコ、鳥、カエルなどの身近な動物が、誰にもそれとわかる表現で、普通に描かれている。


ホセ・デルガドの『闘牛技』という本の挿絵用に作られた、闘牛の版画。まるで、水墨画のような筆使いで、闘牛場の中の、闘牛、闘牛士、観客などを描いている。

以前、別な展覧会でこの作品を目にして、強烈な印象を受けた。その展覧会では、数点しか展示されていなかったが、ここでは、まとまった数の作品を目にすることが出来た。

この作品は、私がかつて目にした版画作品の中でも、屈指のものの一つだ。とにかく、素晴らしい。

ピカドールと牡牛の対決様子を描いた、槍という作品。それまでのモノクロの作品と違って、この作品は、赤と黄色で鮮やかに仕上げられている。スペインの国旗の色を使ったその作品は、ピカソの版画のまた別の魅力をよく表している。

版画作品だけで、これほど多彩な世界を楽しめるのは、さすがピカソ、といったところだろうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿