富士山が世界文化遺産に登録されたことを記念した、東京、広尾の山種美術館の特別展。
富士山が描かれた、江戸時代以降の絵画が展示されていた。
その描き方は実に様々で、この国の人々が、どのようにこの山を考えてきたのかを、よく表している。
会場に入口には、横山大観の心神、という雲間に浮かぶ、富士山の山頂付近を中心とした絵が展示されていた。
信仰の対象としての富士山を、神々しく描いた、大観の代表的な富士山図。
江戸時代に、多くの浮世絵師によって描かれた、富士山への参拝図。無数の豆粒のように描かれた参拝者たちが、富士山の登山路を上っている。こちらの図は、決して神々しくはないが、人々の、この山への信仰を、ある意味で、よく伝えている。
小林古径の不尽。掛け軸に富士山を描いてるが、形は上下に引き延ばされ、色は明るい青になっている。
尽きることがない、ということを、水の色で表現したかったのかもしれない。
歌川広重の東海道五十三次に描かれた富士山は、そうした信仰の対象としての富士山ではない。人々の日々の暮らしの営みの中に、その背景図として登場している。
展覧会の後半は、毎年、この時期に開催される、桜の絵をテーマにした展示。
速水御舟の夜桜。暗闇の中での桜は、色を持っていない。くすんだ色合いで、桜を表現するというセンスが素晴らしい。
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