2014年4月12日土曜日
アンディ・ウォーホル展 永遠の15分(森美術館)
アメリカ、ピッツバーグのアンディ・ウォーホル美術館の作品を中心に構成され、シンガポール、香港、上海、北京で開催されるアジア巡回展。
六本木ヒルズの長いエレベーターを下り、入り口に続くアプローチに、ウォーホルが絵の具を塗りたくったBMWが展示してあった。
ウォーホルは、大学を卒業後、ファッション雑誌の広告のデザイナーの仕事を始め、やがて成功を収めた。
会場の入り口付近には、そうした初期の作品が並ぶ。
靴、ストッキング、女性のドレス、ファッションモデルと思しき男性像など、デザインセンスに溢れた、雑誌用のイラストの数々。
そうした作品から、ウォーホルのデザインセンスの確かさが見て取れる。
1960年代になると、ウォーホルはアーティストに転身する。そして、キャンベルスープ、マリリン・モンロー、プレスリーを題材にした作品で話題になり、すぐに、大きな成功を収めた。
有名なキャンベルスープの缶をそのまま描いた作品。最初のバージョンでは、まだ通常の絵画のように描かれ、ご丁寧に、インクをわざと垂らして描いている。
1970年代になると、シルクスクリーンの手法を使い、注文肖像画を始める。1点25,000ドル払えば、誰でもウォーホルに自分の肖像画を書いてもらえた。
ウォーホルは、足しげくパーティーに参加しては、有名人達に肖像画を売りつけて、それを宣伝にして、一般の客を募った。
会場には、マイケル・ジャクソン、ミック・ジャガー、ヴァレンティノ、そして坂本龍一などの肖像画が並んでいた。
そうして、およそ1,000点ほどの作品が作られ、ウォーホルは、数十億円の大金を手にした。
ウォーホルは、芸術の時代が終わり、ビジネスアートの時代が来る、と語り、自らそれを実践した。
当時のウォーホルは、スーツを着こなしてオフィスに座り、文字通り、ビジネスマンのように電話で注文を受けていたという。
ウォーホルが若きアーティスト、バスキアとコラボレートした作品の数々。会場を訪れていた、若い女性の一人が、”今日見た中で、この絵が一番面白い”と言っていた。
ウォーホルのシルクスクリーンを見慣れてきたせいで、バスキアの肉筆画が、よほど新鮮に見えたのだろう。
会場の各コーナーの壁には、この展覧会の名称にも使われている、”将来は誰もが15分だけは有名人になるだろう”という言葉の他、多くのウォーホル語録が書かれていた。
ウォーホルのそうした皮肉が込められた言葉は、コピーとして、いろいろなマスメディアで紹介された。その意味では、彼の作品と言っていいのだろう。
ウォーホルの写真を含めた作品には、1960年代から1980年代にかけての多くの有名人が登場する。
プレスリーやモンローの他に、エリザベス・テーラー、シルベスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、モハメッド・アリ、レーガン大統領、ローマ法王パウロ13世、毛沢東などなど。
その時代に、青春時代を過ごした人間がウォーホルのそうした作品を見ていると、どうしても、その頃の自分のことがオーバーラップしてくる。
この展覧会で、こんなノスタルジックな気分になるとは、全く予想していなかった。
この展覧会は、ウォーホル美術館によるアジアの巡回展だった。通常は、森美術館の売店で売られるカタログやグッズは、すべて会場内の特設コーナーで行われていた。
売り上げは、森美術館ではなく、アジア巡回展を企画した主催者に入るのだろう。協賛には、BNYメロン、ブルームバーグ、クリスティーズなどの金融業などのグローバル企業の名前が並んでいる。
ビジネスアートの時代が来る、と語ったウォーホルを象徴するような光景は、そのものが、まるでウォーホルの作品のように見えた。
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