2014年4月5日土曜日

驚くべきリアル スペイン、ラテンアメリカの現代アート(東京都現代美術館)


スペイン、カスティーリャ・イ・レオン現代美術館のコレクションを展示した、東京都現代美術館の展覧会。

展覧会のちらしに使われている、建物の中で、背広姿の男が、白い馬に乗っている写真。インパクトのあるイメージで、この展覧会に行きたいと、見る者に思わせる。

これは、フェルナンデス・サンチェス・フェルナンドの、馬に捧げる建築、という映像作品。白を基調とした美しい建物の中を、これまた白い馬が、廊下、部屋の中などを走り回る。

この建物は大学で、学生が政府に対して反対運動を起こした場合に、大学内に騎馬隊を送り込めるように設計し、フランコ独裁政権下に建てられた。

この作品は、この展覧会の特徴をよく表している。多くの作品が、スペインやラテンアメリカの国における、独裁政権を批判する内容だった。

ホルヘ・ピネダの無邪気な子供。壁に白い布が張られているが、その下から、壁の方を向いた少女の足だけが覗いている。

目の前で起きている、独裁政権の正視できないような弾圧に対して、目を背け、閉じこもってしまった少女を表現している。

フランスとの悲惨さ戦争を、黒い絵で描いたゴヤ。ヒトラーのゲルニカへの空爆を、白黒の大画面で批判したピカソ。そうした伝統は、今も確実にスペイン系の画家達に受け継がれている。

ピラール・アルバラシンの映像作品は、スペインの伝統的なフラメンコをパロディ化している。

エンリケ・マルティの家族という作品は、展示スペースの壁いっぱいに、家族と思しき人々の写真が並べられている。

一見すると、微笑ましい印象だが、よくよく見ると、一人一人の表情が、お化けのようになっていたり、奇妙な物が写っていたりと、単なる家族写真ではなくなってくる。

日常世界のすぐ裏側に潜んでいる、暗闇の世界を表している、ちょっと怖い作品だ。

現在も、スペインと、ブラジル、ベネズエラ、チリなどのラテンアメリカ系の国々は、厳しい現実と向き合っている。

しかし、そうした中で、スペイン・リアリズムの伝統を引き継ぐアーティスト達は、時に皮肉り、特に笑い飛ばす、そんな豊かなアート作品を、作り続けている。

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