2014年3月15日土曜日
描かれた風景〜絵の中を旅する(静嘉堂文庫美術館)
武蔵野の面影が残る、世田谷の岡本の森の中にひっそりと佇む、静嘉堂文庫美術館。そこで開催された、日本の様々な名所を描いた絵画をテーマとした展覧会。
酒井抱一の絵手鑑の中の一枚、富士山図。
大胆にデフォルメされている。空は濃い青一色。富士山は白一色、その下に、雲がたなびいている。そして、空には、真っ赤な円で太陽が描かれている。
まるで、現代の広告にでも、そのまま使えそうな作品。酒井抱一のデザイン・センスにはただただ脱帽するしかない。
7年ぶりに公開されたという、室町時代に描かれた、堅田図旧襖絵。水墨画の様式で、右上の山と、左下の農村風景の他は、ほとんど何も描かれていない。省略の美学がそこにはある。
一方で、江戸時代に描かれた、四条河原遊楽図屏風は、二曲一双の屏風の中には、空白はない。京都の四条河原での歌舞伎、能、橋を渡る人々、川で踊る人々など、無数の人々が描かれている。
しかも、一人一人の着物の模様、食事の皿などの小道具まで、実に細かく書き込まれている。こちらもまた、もうひとつの日本の美の形だ。
江戸時代の鈴木芙蓉による、那智山大瀑布雨景図。左側の那智の滝から風に流された水しぶきが、右側に着物の裾のように描かれている。
神の力が、地上に行き渡っていく様子を表現しているような構図。実に面白い構図だ。
江戸時代の田能村竹田の風露真趣図巻。竹田が京都の住まいで過ごした日常の記録を、文章、詩、そして絵で綴った巻物。
自分の小さな家、周りの木々の景色、雀の愛らしい姿など。これぞ、文人の世界、ともいうべき、素晴らしく美しい世界がそこにはある。
竹田が暮らしたのは、今の円山公園のあたりであったという。勿論、現在では、竹田が暮らしていた頃の面影は全く残っていない。その世界は、永遠に、失われてしまったのだ。
明治に描かれた、今尾景年による、六曲一双の耶馬渓図屏風。明らかに、ヨーロッパの風景画の影響が見て取れる。
壮大な耶馬渓の風景が、まず見る物を圧倒する。よく近づいてみると、荒々しい川の岸辺で、豆粒のような一人の人間が岩に腰掛けて、その雄大な風景を見上げている。
日本人が描いてきた風景は、今もまだ、存在しているのだろうか。
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