2014年3月2日日曜日
江戸の面影 浮世絵は何を描いてきたのか(千葉市美術館)
浮世絵の豊富なコレクションで知られる千葉市美術館で、浮世絵に関する大々的な展覧会が開催された。
折しも、ほぼ同時期に、江戸東京博物館で、大浮世絵展が開催され、浮世絵ファンには、たまらない年明けとなった。
江戸東京博物館の方は、浮世絵の誕生から終焉まで、その全体像を概観する、といった内容だったが、こちらの千葉市美術館は、江戸、というテーマに焦点を絞っていた。
浮世絵、という名前からすると、その時代のいろいろな場所、場面、人々が、そこに描かれているように思えるが、実は、浮世絵に描かれているテーマの多くは、意外と限られている。
一つは、吉原。江戸の一般の社会とは確立された、華やかな世界。限られた人しか入ることが許されない、その神秘の空間は、庶民にとっては、大きな関心の的だったのだろう。
何よりも、その絢爛豪華な着物の美しさに目がいく。
渓斎英泉の大判の錦絵には、華やかな衣装を着て、三味線、お琴、読書、書などの芸事を学んでいる遊女達の姿が描かれている。
歌麿の寛政三美人図に代表される、美人図。一見すると、全く同じように見える、その歌麿の三人の美女。よくよく眺めているうちに、少しづつだが、違いが見えてくる。
歌麿は、女性の表情ではなく、女性の細かい仕草、着ている着物、背景や小道具などで、その女性の個性を描いている。
歌舞伎も、浮世絵が描いた代表的なテーマの一つ。特に、団十郎は、他の役者に比べて飛び抜けた人気を誇っていたということで、多くの団十郎を描いた浮世絵が展示されていた。
そして、ここでも、その華麗な舞台衣装が目を引く。美人画と違い、役者絵では、個々の役者の個性が、その表情で明確に描き分けられている。
特徴的な目や鼻の形で、当時の歌舞伎ファンたちは、描かれているのが誰か、すぐにわかったはずだ。
豊国による、団十郎の楽屋を描いた浮世絵では、団十郎の姿はない。しかし、化粧鏡の中に、赤い隈取りを終えた団十郎の顔が映っている。まるで、ベラスケスのラス・メニーナスのような、洒落た演出だ。
そして、最後のテーマは、富士山を描いた浮世絵の数々。富士山というと、北斎の富嶽三十六景が思い浮かぶが、それ以外にも、多くの絵師が富士山を描いている。
江戸の町中から、遠くの富士山が覗いている、という構図は、ほとんどスタンダードのような存在となった。
富士山のシンプルなシルエットは、描きやすく、見た人は、その形から、簡単に富士山ということがわかる。
江戸時代を通じて、絵師達が描いた浮世絵に描かれていたものは、江戸のそのものの姿、というよりは、人々が、普段は目にすることが少なく、見てみたいと思う風景、人物、などだった。
その意味では、浮世絵に描かれているのは、江戸の庶民の夢、と言ってもいいのかもしれない。
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