2014年3月22日土曜日
ザ・ビューティフル 英国の唯美主義 1860-1900(三菱一号館美術館)
東京駅に近い、丸の内にある三菱一号館美術館。そこで、イギリス、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の収蔵する、19世紀後半の、唯美主義の展覧会が行われた。
展覧会のカタログによれば、この展覧会は、2011年から2012年にかけて、ロンドン、パリ、サンフランシスコで開催された、カルト・オブ・ビューティー展をもとにしているという。
それらの展覧会はかなり大規模だったようだが、この東京の展覧会は、規模を縮小して開催されたようだ。
エドワード・バーン=ジョーンズのヘスペルデスの園。木にしがみついている、ギリシャ神話の登場する顔がほとんど口になった怪物を中心に、両端に美しい女神が描かれている。そのミスマッチが、実に美しい。
これまで、イギリスの世紀末の画家と言えば、ロセッティ、ミレイ、ジョーンズらのラファエロ前派の画家達しか知らなかったが、この展覧会で、ジョージ・フレデリック・ワッツ、フレデリック・レイトン、フレデリック・サンズ、アルバート・ムーアらの絵を見る機会を得た。
いずれも、美しい女性を、色鮮やかに、繊細な筆使いで、実に丹念に描いている。文字通り、唯美、の世界観だ。
貴族階級や、新興のブルジョアの夫人達が、美しい肖像画のモデルとして描かれている。おそらくは、思いっきりデフォルメしたであろう、唯美の肖像画に、彼女達はさぞかし満足したに違いない。
ホイスッラーは、印象派との比較で取り上げられることが多いが、19世紀後半にロンドンでも活躍していた。
ノクターン:黒と金−輪転花火は、暗闇の中に、輪転花火の光が描かれているが、説明がなければ、何が描いてあるのかよくわからない。抽象画のような作品。明らかに、ターナーの影響が見られる。
このノクターンのシリーズは、美術評論家のラスキンから猛烈な批難を浴びた。
その一方で、ロンドンやアムステルダムの都会の風景をテーマにしたエッチング作品では、細部まで克明に描かれており、とても同じ画家の作品とは思えない。
ビアズリーによるサロメなどの書物の挿画の数々。その独特な世界観を表したモノクロの絵画世界は、後世のアニメーションなどに大きな影響を与えた。
絵画の他に、数多くの工芸品が展示された。バーン=ジョーンズのデザインしたブローチは、赤、青、緑の宝石で、美しい鳥の形をかたどっている。
ド・モーガンの皿や壷、ゴドウィンの飾り戸棚やサイド・テーブル、美しい壁紙などの他に、日本や中国からもたらされた陶器などもあり、世紀末のイギリスの上流階級の暮らしの様子が想像できる。
会場に展示された美しい作品の数々は、19世紀後半のロンドンを中心とした、イギリスの当時の悲惨な社会の状況と、あまりにもコントラストを成していて、実に興味深かった。
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