2014年7月27日日曜日

神品至宝 台北国立故宮博物院展(東京国立博物館)


昨年、台湾を訪れた際に、故宮博物院展を訪れた。

しかし、館内は広く。限られた時間の中では、一つ一つの作品をゆっくり味わう時間など無い。

上野の東京国立博物館で開催されたこの特別展では、およそ200点の作品が展示され、その一つ一つを、ゆっくりと味わうことができた。

今回の企画展では、故宮博物院展を代表する翠玉白菜が、開始から2週間だけ展示されるとあって、その2週間で、すでに10万人が訪れた。

毎日、翠玉白菜を見るために、数時間も待たねばならない行列ができた。

その翠玉白菜の展示も終わり、行列も消え、訪れたのは、休日の閉会間近の時間だったが、全ての作品を、間近で目にすることができた。

70万点という収蔵作品から、わずか200点を選ぶとあって、展示内容には、明確なテーマが感じられた。

古代の青銅器や玉器、唐から宋、元の時代にかけての書画、そして明以降の陶器などの工芸品、といった構成。

翠玉白菜はもとより、散氏盤、王羲之の書、宋の皇帝毅宗の書画、馬遠の花図、汝窯の青磁など、よくぞこれだけの作品の展示を、故宮博物院が許可したものだと、驚嘆してしまう。

実は、故宮博物院は、来年、南院をオープンする予定で、そのオープン記念の目玉として、東京国立博物館の収蔵品を展示することになっている。

そこには、これまで門外不出だった数多くの日本の国宝が含まれており、つまり、お互いの交換条件として、この奇跡のような特別展が実現した。

そうした作品の中で、特に印象深かったのは、漆と刺繍。

明の時代の、漆の器や壷など。その表面の精巧な彫刻に、自分の顔がガラスにピタリと吸い付いていることが、文字通り、痛いほどわかる。

刺繍は、衣装のためのものではなく、刺繍で絵を描き、それを壁に飾るという用途。

水墨画、仏画、色鮮やかな風景画など、近づいてみるまで、それが刺繍だとは一見するとわからないほど精巧に織られている。

中には、宋の米芾の書を、刺繍で再現したものさえある。

そうした漆や刺繍の作品は、台湾の故宮博物院でも、展示される機会はあまりないという。中国美術の新たな一面を発見できた。

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