JR鶯谷駅を降り、ラブホテル街を抜け、情事を終えたカップルとすれ違いながら、書道博物館へ向かう。
”美しい隷書”という名の企画展。中国の漢の時代を中心とした隷書の名品が揃った、書道ファンには堪らない内容の展覧会。
1階の奥の大型展示ケースには、高句麗の時代の広開土王碑の拓本。とにかく、その大きさに圧倒される。
そこに書かれている内容を巡って、未だに論争が絶えないが、そこに書かれている文字に注目すると、素朴な味わいがあり、そうした論争とは無縁の存在感を誇っている。
天下を統一した始皇帝が、全土に作らせた刻石。現在は、2つだけが残っているが、そのうちの1つ、泰山刻石の拓本。
中国の歴史で、初めて統一された文字が、そこには刻まれている。
臣という字は、今では四角い形をしているが、その拓本では、周りの四角は、丸い円のように描かれている。
後漢の時代の、史晨前碑、後碑。上からつぶしたような、横長の個性的な文字が印象的な拓本。
清の乾隆帝が編集した、名筆を集めた三希堂帖の冒頭に置かれた、薦季直表の拓本。三国時代の魏の重臣の進言書。
それらは、書の名品であると同時に、歴史の証人でもある。
たまたま、石川九楊の『説き語り 中国書史』の隷書の章を読んでいたら、代表的な隷書として写真付きで紹介されていた拓本の多くが、この企画展で展示されていた。
このラブホテルに囲まれた、小さな博物館には、もの凄いものたちが、収蔵されている。
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