2014年2月15日土曜日
Kawaii(かわいい)日本美術展(山種美術館)
東京、広尾にある山種美術館で開催された、”かわいい”をテーマにした展覧会。子供や動物の愛らしい姿を描いた、多くの日本画(一部は洋画も)が展示された。
会場を訪れてまず驚いた。チケットを購入するのに、それほど長くはないが、列が出来ている。
この美術館が、以下の場所に移ってから、このような列に並んだのは初めてだ。係の人に聞いたら、伊藤若冲の樹下鳥獣図屏風目当ての来場者が多いからではないか、という。
さすが、若冲。
会場内も、これまで経験したことのないほどの混在。くだんの若冲の前には、長蛇の列ができている。しばらく、他の作品を鑑賞することにした。
私が大好きな、長沢蘆雪の作品は2点、展示。唐子遊び図と百鶴図。
唐子遊び図は、文字通り、中国人の多くの子供が、書画、琴、囲碁など、文人のたしなみといえる芸事を楽しんでいる図。子供らしく、あちらこちらでは、喧嘩が起こっているようだ。
百鶴図は、百匹までは行かないが、多くの鶴が、縦長の画面に描かれている。画面の上部には、山の向こうから、鶴の編隊がこちらに向かって飛んでいる
遠くから、近くに向けて、鶴がきれいに隊列を作っている様子を、蘆雪は細かい筆先で丹念に描いている。見方によっては、ぺらぺら漫画のように、あるいは、連続撮影された写真のように見えて、鶴が遠くから、だんだんとこちらの方に飛んでくるようにも見える。
蘆雪は、明らかにそうした効果を狙って、この図を描いている。先の、唐子遊び図も、多くの子供達の躍動的な様子は、静止しているはずの絵の中に、動きが感じられるようになっている。
川崎小虎の、ふるさとの夢。獅子舞芸の旅芸人の子供が、草むらで横になって寝ている。その周りには、子供が、夢の中でふるさとを回想し、その様々なシーンが、幻想的に描かれている。
何となく、シャガールの世界を連想させる、実に素晴らしい作品だ。
関山御鳥の、琉球子女図。4双の屏風に、5人の琉球子女が、紅型を着ている。背景は橙色だが、その上で、それぞれの赤、青、黄色などの少女の紅型が、模様と相まって、とにかく美しい。
この作品のテーマは、まさに色だ。
竹内栖鳳の魅力的な小品が、数点、展示されていた。鴨雛、みみづく、池に浮かぶカエルを描いた、緑池、干柿。いずれも、晩年の作品。力が抜けており、筆使いが、とても自然だ。
自由と言えば、こちらは、もっと自由な、熊谷守一の4点。とのさま蛙、うさぎ、蝉、ほたるぶくろ。まるで、子供が書いたような作品。
こうした作品について、何かを語ろうとした瞬間に、その作品の魅力はすぐに逃げていく。言葉は何もいらない。ただただ、その世界に浸るのがよい。
そうこうするうちに、ようやく、伊藤若冲の樹下鳥獣図屏風の前の人影も、少なくなってきた。
この作品は、以前、千葉市立美術館で見たことがあった。そちらは、お客はまばらで、じっくりと鑑賞することができた。
およそ、4年ぶりとなる再会だが、驚きは変わらない。6双2曲の屏風。右の屏風には、大きな白い象が、左の屏風には、多彩な鳳凰が、それぞれ中央に描かれ、その周囲に、多くの動物と鳥が描かれている。
枡目描き、といわれる、根気の必要な独特の手法。ポップアートのような、エキセントリックな色使い。
4年前は、あまり目につかなかったが、遠景の表現も、細かい工夫がされていることに気がついた。とにかく、細かい。ここまで描ききる、若冲という画家に、改めて感心することしきり。
かわいい、という名前の展覧会だったが、それを描いた画家達の、凄さ、ばかりが印象に残った展覧会だった。
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