2014年2月1日土曜日

シャヴァンヌ展 水辺のアルカディア(Bunkamura ザ・ミュージアム)


東京、渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで、日本で初めてとなる、ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの展覧会が行われた。

題名は、”シャヴァンヌ展 水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界”と、長々として、しかも、ものものしい。

シャヴァンヌは、1824年にフランスのリヨンで生まれ、幼い頃に両親を亡くし、画家になる道を目指した。ドラクロワのアトリエに入ったが、すぐに、トマ・クチュールの元で絵画を学んだ。

やがて、古代ギリシャなど古い時代をテーマにした、壁画などの作品を手がけるようになり、フランスを代表する大画家となり、1898年に亡くなった。その生涯は、ほとんどが、19世紀のフランスの歴史に重なっている。

シャヴァンヌというと、寡聞にも、オルセー美術館展で過去に見た、”貧しき漁夫”くらいしか知らなかった。

キリストと思しき一人の漁夫が、みすぼらしい服装で、いまにも沈みそうな小さな船の上で祈りを捧げている。その不思議な静寂の世界が、強烈に印象に残っている。

しかし、この展覧会で出会うことができたシャヴァンヌの世界は、それとは異なり、アルカディアという言葉に象徴されるように、幻想的で華やかな世界だった。

”諸芸術とミューズたちが集う聖なる森”という、シャヴァンヌの最高傑作だという壁画を、キャンバスに描いた作品。

古代ギリシャの神話世界を思わせる風景の中に、芸術を象徴する人物と、女神たちが描かれた作品。古代ギリシャ様式の建築、空を飛ぶ天使などが、そうした雰囲気を、よく表している。

神話世界というと、同じ時代のギュスターブ・モローが思い浮かぶが、モローが強い色を使って、強烈な色調で表現するのに比べ、シャヴァンヌは、パステル調の柔らかに色を使い、穏やかな世界を作り出している。

私は、モローの世界観をより好むが、明らかに、シャヴァンの世界の方が、世間の受けはいいだろう。

シャヴァンヌは、他の画家へも大きな影響を与えた。

ドニやヴィヤールの絵を思い浮かべてみれば、いかに彼らがシャヴァンヌから影響を受けていたかがわかる。スーラやゴッホも、シャヴァンヌの絵をよく研究していたという。会場には、ロダンが作成した、シャヴァンヌの上半身の彫像が展示されていた。

日本の黒田清輝は、シャヴァンの知己を得て大きな影響を受けて、その弟子の藤島武二にも間接的だが、大きな影響を与えた。青木繁の神話的な作品にも、シャヴァンの影響が強いという。

シャヴァンヌの描く絵画は、古典派ともロマン派とも、そうした言葉では表現することのできない、多面的な性格を持っている。

文字通り、それは、シャヴァンの絵画世界、としか表現できないものだ。

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