2014年2月9日日曜日
クリーブランド美術館展 名画でたどる日本の美(東京国立博物館)
東京、上野の東京国立博物館で開催された、アメリカのクリーブランド美術館が収蔵する、日本絵画の展覧会。
室町時代、16世紀に春屋宗園の霊昭女図。唐時代に、裕福な家に生まれながら、禅の思想に触れて、清貧な生活を送ったという、伝説的な女性を描いている。
自ら野菜を採り、その籠を下げている女性の半身像を、使う色を極端に押さえて、清貧というイメージを強調している。
その色の代わりに、線の使い方が、細かく、丹念で、思わず目を見張ってしまう。頬にかかる髪の毛の一本、一本まで、丁寧に描いている。
俵屋宗達の工房、伊年の印のある、雷神図屏風。宗達の筆による、風神雷神図屏風がすぐに連想されるが、こちらは、雷神図のみ。しかも、その雷神の顔は、竜のような顔に描かれている。おそらくは、対になる風神図もあったのだろう。
今日では、建長寺のものが決定版のように思われているが、当時は、いろいろなバージョンの風神雷神図が、宗達の工房によって描かれたのだろう。
渡辺華山が描いた、大空武左衛門像。2メートル27センチの身長があったという、熊本藩のお抱えの関取を、カメラ・オブスキュラに映して、それを描いた、という珍しい絵。
河鍋暁斎の地獄大夫図。不幸な自分の反省を地獄として、自らの着物に地獄の絵を描かせ、一休の弟子でもあったという室町時代の遊女を描いている。
暁斎は、青を基調とした、色鮮やかな着物を描いているが、よくよく見ると、描かれているのは七福神で、地獄絵ではない。暁斎の粋なセンスがいい。
この展覧会には、日本絵画だけではなく、中国絵画も何点か展示された。南宋時代の馬遠の松渓観鹿図。同じく南宋の米友仁の雲山図鑑。いずれも、何時間見ていても、見飽きないほどの豊かさを秘めている。
曾我蕭白の蘭亭曲水図。王羲之の蘭亭序で有名な、蘭亭の曲水の宴を描いている。縦長の掛け軸に、遠景で、人物を豆粒のように描く、独特の蕭白の世界が炸裂している。
クリーブランド美術館の館長を務めた、シャーマン・リーは、日本を占領統治していた、GHQの美術部局の顧問として働いた経験を持っていた。
その際に、日本美術の調査に参加し、その経験を元に、この日本美術コレクションの核となっている多くの作品を収集したという。
その意味では、この展覧会に展示されたコレクションは、アメリカが日本を占領したことによる、一つの成果と言っていいだろう。
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