日本で40年振りに開催されたという、スイスの画家、フェルディナンド・ホドラーの回顧展。会場は、上野の国立西洋美術館。
ホドラーの言葉が、会場に掲げられていたが、この言葉に、ホドラーの芸術の核心が、言い尽くされているように思える。
”芸術作品は、事物に内在する新たな秩序を開示するだろう。”
ホドラーの代表的な作品は、人物画と風景画だ。
人物画では、複数の人間が横並びで、まるで踊りを踊るように、同じようなポーズを取り、ひとつの秩序の中に描かれている。
そうした作品は、日本の屏風絵に描かれる、京都の鴨川沿いの歌舞伎図や、豊国祭の踊りの図を連想させる。
動きのない絵画の中に、不思議なリズムが生まれ、見る者の心の中で、そのリズムが静かに動き始めるような、何とも言えない錯覚に襲われる。
風景画は、湖や山の風景を描いたものが多い。
湖のまっすぐな水平線、山を取り巻いている稜線。
そこに描かれているのは、確かに実在のレマン湖やユングフラウ山だが、その背後には、もっと普遍的な何かが、隠されているように思える。
それこそが、ホドラーが言うところの、”事物に内在する新たな秩序”なのかもしれない。
ホドラーの絵の魅力に取り付かれてしまった人間は、その時から、この世界を見る自分の見方が、全く変わってしまったことに、すぐに気づくに違いない。
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