膨大な近現代の絵画コレクションで知られる、スイスのチューリッヒ美術館の作品を展示する、六本木の新国立美術館での展覧会。
フランスの印象派などの作品に比べて、日本ではあまり目にする機会の少ない、スイスやドイツの画家の作品を見ることができて楽しめた。
入口には、スイスを代表するセガンティーニの2つの小品。いずれも、スイスの大自然の風景の中に、女性を描いている。
その2つの絵の題名には、淫蕩な女、虚栄、といった、セガンティーニとは一見結びつかないような言葉が並んでいる、
自然の中の女性は、決して美しく純粋だけの存在ではない。
象徴主義的なセガンティーニの作品の中には、スイスという風土の持っている、ヨーロッパの中での特異さが、ほのかに表されているように思える。
同じくスイスを代表する、ホドラーの人物画と風景画。人物画は、ホドラーが影響を受けた、クリムトのにおいがする。湖を描いた作品は、そのパステル調の色合いが、何とも言えずに美しい。
表現主義、として紹介された、ベックマンの海岸通りを描いた風景画と、控え室での女優たちを描いた人物画。
太い輪郭線と、原色の色合いが、一目見ると目に焼き付いてしまいそうだ。
ナチスによって、退廃芸術とされたベックマンらの作品。
しかし、退廃していたのは、芸術だったのか、政治だったのか?
オーストラリア生まれのココシュカの作品は、とりわけ深く印象に残った。
少女と猫、という作品では、人間や猫が、まるで生クリームでできているように、フワフワに描かれている。
また、モンタナの風景、という作品は、アルプス山脈の山あいの、高原の小さな町の風景が、色鮮やかに描かれている。
比較的、暗い色の絵が多いイメージがあるココシュカだが。この作品の色の鮮やかさは、まぶしいほどだ。
他にも、モンドリアンのコンポジション、シャガールの珍しい風景画と戦争を描いた作品、エルンストの都市の遠景など、見所のある作品が多かった。
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